こんにちは。筆致俳句【HITCH-HIKE】の黒酢です。
最近大分寒くなってきましたね。息を吸ったら口から秋が入ってきます。
ときに皆さんは一年の中でどの季節が好きでしょうか?
春の桜、夏の海や花火、冬のこたつにみかんに雪祭り……
いずれも魅力的ですが、私は今くらいの季節が一番好きで、夏から秋、あるいは秋から冬への変わりかけの時期は気温の低下が鬱な気持ちを誘う反面、感性が鋭敏になっていく感覚がとても心地よく、目の覚めるような快感がそこにはある気がします。
そして何より今の時期はコーヒーが旨い!
また、「いつも頭ん中に常駐させておくのは辛かろうから……」、と記憶の計らいが働いているのかどうかは知りませんが、脳内フォルダの辺土でホコリをかぶって保存されていた、忘れてはいけない想い出の数々が、後頭部からドライヤーの冷風を吹き付けられたような新鮮な感覚と共にぶわっとぶりかえしてくるのもこの時期で、長電話が増える一方で外出の誘いがめっきり減るこの季節は、それら記憶の数々を反芻して日々に内省と見積もりを重ねるまたとない機会であるように思います。
忘れたいけど忘れるべきではない思い出を生活の傍らにそっと侍らせる矜持を持っている人かどうか、あるいは寂しいけど正しい言葉の数々を共有しているかどうか、それらは私にとって友人と親友を明確に分ける重要な基準のひとつでもありますが、「幸せ七割、不安三割が理想」の島田紳助氏の言葉よろしく、世間の誰もが虚構の幸福で生活を上げ底する事無く、許容可能な不幸とヤレヤレ言いながら付き合っていく懸命さを抱いていってくれるようになったらいいなあと思います。民主党が無駄な税金を仕分けしている一方、私たちもまた見栄やら善意やらの贅肉をゆっくりとでいいから削っていけたら良いですね。ではまた。
第五回テーマ「寂しいけど正しい言葉 10選」
●田中さんはとても優しくて 見てるこっちが辛いんです
(『田中さん、愛善通りを行く』/空気公団)
●「ひとつ忠告していいかな、俺から」
「いいですよ」
「自分に同情するな」と彼は言った。
「自分に同情するのは下劣な人間のやる事だ」
「覚えておきましょう」と僕は言った。
(『ノルウェイの森』/村上春樹)
●:バラバラだったみんなの気持ちがひとつにまとまりかけた映画終盤、
そっと荷物をまとめてその場から立ち去る刺青屋の女
「どうしていっちゃうの?」
「みんな仲良すぎるわ」
(『バグダッド・カフェ』/パーシー・アドロン監督)
●赤塚不二夫「また来いよ」
つげ義春「もう来ないよ」
(『トキワ荘の青春』/市川準監督)
●練馬にて
夜中、無性にマックが食べたくなり、店に入って
「てりやきマックバーガーセットひとつお願いします」と注文する。
店員、なぜかしばしの沈黙。
「おそれいりますが、三軒となりで同じ注文をしていただくか、
もしくはこちらのメニューなどオススメですが」と言われる。
一瞬なんのことだかわからず顔を上げる。
そこはケンタッキー・フライドチキンだった。
●:ネットで拾った正論
「どうして戦争が起きるの?」
「みんなが平和を望むからさ」
●「鉄壁くんの爆守備は、自分の不ヅキを誰のせいにもしない、
真冬の雪原にひとり立つ針葉樹だと思っていたの。
だけど、私の知っている鉄壁くんはもういないのね」
(『ノーマーク爆牌党』/片山まさゆき)
●生協への質問:
「愛は売っていないのですか…?」
生協の回答:
「どうやら愛は非売品のようです。もしどこかで売っていたら、
それは何かの罠かと思われます。くれぐれもご注意下さい」
(『生協の白石さん』より)
●彼女の死を僕に知らせてくれたのはもちろん永沢さんだった。
彼はボンから僕に手紙を書いてきた。
「彼女の死によって 何かが消えてしまったし、
それはたまらなく哀しく辛いことだ。 この僕にとってさえも」
僕はその手紙を破り捨て、 もう二度と彼には手紙を書かなかった。
(『ノルウェイの森』/村上春樹)
●田中さんはたまに怒るんだ、苦い味のままにするなって
(『田中さん、愛善通りを行く』/空気公団)
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